一貫煎 いっかんせん
一貫煎とは?
この記事のポイント
一貫煎は肝腎陰虚や肝気横逆によって起きた症状に効果がある。補益剤の中でも、補陰剤に分類される。
一貫煎の出典
『柳州医話』
一貫煎の分類
- 補益剤
- 補気
- 補血
- 気血双補
- 補陰 ← 一貫煎
- 補陽
一貫煎の組成
- 北沙参 10g
- 麦門冬湯 10g
- 当帰身 10g
- 生地黄 30g
- 甘杞子 12g
- 川楝子 5g
一貫煎の効用
- 滋陰疏肝
一貫煎の主治
- 肝腎陰虚・血燥気鬱
胸脘脇痛、呑酸吐苦、咽乾口燥、舌紅少津、脈細弱あるいは虚弦、および疝気瘕聚
一貫煎の方解
一貫煎は、肝腎陰虚や肝気横逆によって起きた症状に効果あり
一貫煎は、肝腎陰虚や肝気横逆によって起きた症状に効果がある。
その機序は以下のようになる。
肝は疏泄を疏泄を主どり、条達を良しとする。
しかし陰虚血燥すると、肝が養うところを失うために横逆する。
すると胸脇疼痛、犯胃となる。
こうなると呑酸吐苦、肝腎陰虚、津液不足となり、咽乾口燥、舌紅少津といった状態になる。
陰虚肝気不舒になると、肝脈を巡って疝気瘕聚の証となる。
一貫煎は、こういった機序を一つ一つひも解くように生薬を組成している。その方解は以下のようになる。
一貫煎の方解
- 君薬は生地黄 → 滋陰養血して肝腎を補う。
- 臣薬は北沙参・麦門冬・当帰・甘杞子 → 君薬の生地黄に配伍することで滋陰養血生津し柔肝する。
- 佐薬は川楝子 → 少量の川楝子の疏肝理気作用を用いる。
川楝子は性味が苦寒で、通常であれば「苦燥傷陰」となる。しかし、滋陰養血が主力となる一貫煎の中にあっては、むしろ傷陰の害は無くなる。この点が、一貫煎が他の理気疏肝を主とする方剤と異なる点である。
以上の生薬の配伍によって、滋陰柔肝を奏功させて疏肝の効力を発揮する。
逍遙散との違い
一貫煎と逍遥散は、肝鬱脇痛の症状を治療するという点では同じであるが、同じ肝鬱脇痛でも言及する症状が異なる。
逍遥散は、情志不遂による肝気鬱滞が原因の脇痛で、かつ肝逆乗脾になっているので、神倦食少が現れている。
故に、逍遥散は疏肝解鬱、健脾養血が治療目的の方剤ということになる。
一方の一貫煎は、まず肝陰不足から始まり、気鬱生熱して起きた脇痛であることが鑑別ポイントである。
この鬱熱が散らないでいると、胃を犯して呑酸吐苦が現れる。故に一貫煎の場合は、滋養肝腎、疏泄肝気が治療の目的になる。
参考資料
この記事を書いた人
瀬戸郁保
IKUYASU SETO
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
古医書に基づく鍼灸を追究しさらに漢方薬にも研究を拡げています。東洋医学の世界を多くの方に知っていただき世界の健康に貢献したいと思います。
東京の表参道で、東洋医学・中医学に基づいた源保堂鍼灸院・漢方薬店 薬戸金堂を営んでおります。
その他の東洋医学の用語など
その他の東洋医学・中医学用語
本サイトご利用に当たってのご注意
一般の方へのご注意
本サイトは、一般の方が自己判断・自己診断をするためのものではありません。あくまで漢方薬の辞書的な記述に留めております。よって、この情報を元にして自己判断・自己診断して処方をしないで下さい。同時に、この情報を元に安易に他人にアドバイスをしたり、安易なシェアをするようなことはなさらないようにしてください。症状がある場合は自己判断せずに、適切な医療機関で受診して下さい。
専門家の方へのご注意
本サイトは、東洋医学・中医学・鍼灸などを学ぶ人が、その学習の助けになるようにと制作しているものです。それ故に、本サイトの内容は細心の注意を払って正しい内容を書くように努めております。しかしながら、不十分な点もまだまだあると思いますので、その場合はご意見・ご指導などを賜りたいと思います。コメント欄にご一報下さい。