『西洋医学が解明した「痛み」が治せる漢方』

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東洋医学関連の本

『西洋医学が解明した「痛み」が治せる漢方』

  • 著者 井齋偉矢
  • 出版社 集英社
  • おすすめ度 ☆☆☆☆☆

本書の軸は、著者が提唱する「サイエンス漢方処方」について解説したものです。しかし、前半はその処方方法についてではなく、そもそも漢方薬がどうして効果があるかということを解説しており、そこがまた本書の魅力になっています。辨証論治の対極にある処方方法だと思いますが、明確な処方は強い武器になると思います。

漢方薬の処方ってベテランしかできないのか?

 漢方薬は、2000年以上も前から存在するとても古い医薬品である。それ故に、これまでに多くの医家が携わって育ててきたという歴史がある。その歴史が深いことからか、現代においても、漢方薬に携わる人々は、一言居士が多い。そのため、漢方薬を理解するには修業が必要のように思われもする。漢方薬の処方には熟練の技や長年の経験が必要だと言われている。そしてまた、長年の経験だけではなく、その基盤となる東洋医学独特の学問や概念の修得も必要であるということになる。

 もちろん、それら古人の人々に尊敬の念を抱くことは大切です。さまざまな人々が命を落とす中で、長い年月をかけて試行錯誤したのだから、そこに敬意を表するのは当然のこと。しかし、それにあまりに引きずられてしまっても、かえって木を見て森を見ずということにもなりかねない。

 しかし、本当にそうだろうか?
 漢方薬の処方のためにじっくり勉強をしてみても、結局あまりいい成績(患者さんが改善していくという意味で)を残していない医師・薬剤師・登録販売者も多いのではないだろうか?

 中医学に則って辨証論治をしています・・・でも治りませんでした・・・。
 誰が一番迷惑をこうむるか?

 そんなことがあっては無駄であるばかりか、患者さんにとっては無益であるばかりか害になる。

 それは勉強が足りないからだ!という先生もいるだろう。

 でも、いつになったらそれができるようになる?
 漢方薬の処方は、ベテランにならないとできないのでしょうか?

患者さん目線で

 患者さんにとっては、とにもかくにも改善するのが望み。患者さんにとっては答えが大事。答えを求めているのだ。その答えを出すプロセスは何でもいいのだが、そこにこだわっているのは医師・薬剤師・登録販売者の側。辨証論治をするのも大切だが、それが間違っていたら元も子もないわけで、とにかく答えを出すことが大事なのだ。

 漢方薬を扱う医師・薬剤師・登録販売者のなかには、「私はまだ辨証論治は未熟で・・・」と謙遜する人がいる。もしかしたら謙遜ではなく本気で言っているのかもしれないし、本当に実力がないからかもしれないが、もしそうであるならば、それに付き合わされている患者さんは気の毒としか言いようがない。辨証論治が出来る出来ないということにこだわるのであれば、患者さんの不利益にならないように、とにかく結果が出るひとつの簡便な指針があるほうのがはるかにいい。
 
 辨証論治が出来るならば出来たほうがいいし、できるに越したことはない。
 しかし、それがしっかりと出来るようになるまでいったいどれだけ時間がかかるのだろうか?実際に患者さんの前に出て仕事ができるようになるまで、どれくらいの年月を必要とするのだろうか?

 もしそこに疑問を感じたり、不安を感じているのなら、とにもかくにも実践的な本書の内容を臨床に活かしたほうがいいだろう。その方がはっきりと患者さんの役に立つのであるから。それこそが患者さんの目線に立つということなのではないだろうか。

辨証論治をしている先生にも

 本書は、著者が提唱している「サイエンス漢方処方」を伝えるもの。
 でも、読んでいて私が感動したのは本書の前半部。
 どうして漢方薬が効くのか?どうして西洋の薬が効かないのか?漢方薬が臨床において絶対不可欠であるという、ことをしっかりと明示しているところが、とにかく本書を読む価値ではないだろうかと思います。

 著者は、漢方薬がどうして効果を上げるかという原理を4つに絞っており、それを詳細に解説してくれています。この4つの原理はネタバレになるのでここでは詳細をお伝え出来ないので、本書を手に取ってほしいところだが、この原理は鍼灸や気功といった東洋医学全般の作用機序の説明に使えるのではないかと思います。
 この4つの原理は、いわば身体を観るための視点でもあります。よって、漢方薬に限らず、生活全般のアドバイスにも通じるし、とても応用が効くと思います。

 中医学の辨証論治や、日本漢方の基礎になっている『傷寒論』『金匱要略』とはほぼ対極にあります本書は、毛嫌いされるかもしれませんが、読んでみるとそんなにバッティングするものではなく、辨証論治にも大いに役立ちます。そういった意味で、漢方薬全般にスッキリと答えを出してくれる名著かなと思います。

 ちなみに、著者のことをYouTubeで調べてみましたら、北海道の病院で臨床をしている姿を見ることができます。その姿を見ると、とても力強く漢方薬を処方していることを知り、「サイエンス漢方処方」とは、患者さんの必要に応じて、臨床から生まれてきた処方方法なんだということが分り、本書の内容に強い説得力を感じることができます。

その他の参考と図書

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この記事を書いた人

源保堂鍼灸院・漢方薬店薬戸金堂 瀬戸郁保

瀬戸郁保
IKUYASU SETO

鍼灸師・国際中医師

古医書に基づく鍼灸を追究しさらに漢方薬にも研究を拡げています。東洋医学の世界を多くの方に知っていただき世界の健康に貢献したいと思います。
東京の表参道で、東洋医学・中医学に基づいた源保堂鍼灸院・漢方薬店 薬戸金堂を営んでおります。

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