舌診について① 舌診の概要・意義

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舌診について①

舌診は、中医学(東洋医学)の歴史の中でも最も古い頃から活用されており、すでに『黄帝内経』や『傷寒論』などの古医書(古典医籍)の中にもうかがい知ることができる。

13世紀に至って、舌診を伝えるはじめての専門書である『敖氏傷寒金鏡録』が書かれました。

そしてさらに時代は下り、16世紀になって温病学が勃興すると、舌診の重要性が更に高まりました。舌診は外感熱病の弁証にたいへん重要な望診の一つになるため、この時期に急激に発展したと言えます。

中医学の理論が確立された近代においては、さらにその系統・分類が整理されて、重要性が高まっています。

舌診の意義

舌診の臨床上の意義は、弁証をするための客観的な根拠として不可欠であることにある。
舌診が利用可能な弁証方法は、八網弁証をはじめとして、病因病機弁証、臓腑弁証、六経弁証、衛気営血弁証、三焦弁証といったほぼ全ての弁証方法において重要な指標になる。

『臨症験舌法』の中には、「凡内外雑証、亦無一不呈其形、著其色於舌・・・・・据舌以分虚実、而虚実不爽焉。据舌以分陰陽、而陰陽不謬焉。据舌以臓腑配主方、而臓腑不差、主方不誤焉。危急疑難之頃、往往証無可参、脉無可按、而惟以舌為凭。婦女幼稚之病、往往聞之無息、問之無声、而惟有舌可験。」とあるが、これを読むと、歴代の医家が舌診をいかに重視してきたかが分かる。

舌の粘膜上皮は薄くて透明で、舌には血液が多く供給されている。さらに、舌乳頭の変化はよく反応し、舌が体内の変化を非常によく反映するために、体を分析する指標になる。
舌の変化は、客観的な尺度として、正気の盛衰病邪の深浅邪気の性質病状の進退を判定するのに役立ち、疾病の転帰、予後などの判断にも繋げることができる。

以下、その意義についてそれぞれ解説する。

舌診で「正気の盛衰」を判断する

『辯舌指南・緒言』では、清の医家である徐霊胎の説話が引用されている。そこには、「舌為心之外候、苔乃胃之明征、察舌可占正之盛衰、験苔以識邪之出入。」とある。
この文章を解釈していくと、まず苔については、胃の気の生ずるところと言っている。そのため、苔を診て分かるのは、胃の気の存亡ということが分かる。たとえば、舌質が紅潤であれば、気血が旺盛であると言うことになる。舌質が淡白であると言うことは、気血虧虚ということになる。苔が薄く白く潤であれば、胃の気が旺盛であり、舌光無苔は胃の気が衰微し、胃陰枯竭していることを現わしている。

苔=胃の気の存亡

【例】
舌質が紅潤である場合 → 気血旺盛
舌質が淡白である場合 → 気血虧虚
苔薄薄潤である場合  → 胃の気が旺盛
舌光無苔である場合  → 胃の気が衰微、胃陰枯竭

舌診で「病位の深浅」を判別する

『辯舌指南』には、「辨舌質、可決五臓之虚実。視舌苔、可察六淫之浅深。」とある。
外感、内傷に関わらず、舌苔の厚薄を診ることで、邪気の深浅軽重を判断することができる。
例えば苔薄多は疾病の初期で邪気が入っているもまだ浅く、病位は表となる。逆に苔が厚いと、病邪が裏に入っていることを現わしているので、病位はより深いということが分かる。舌質が絳の場合は、熱入営血で病位は深く、病情が重くなっていると判別する。

舌診で、病期・病位を判別する。

【例】
舌苔が薄く多い場合 → 病期は浅く、病位も表
舌苔が厚い場合   → 病邪が裏にあり、病位は深い
舌苔が絳の場合   → 熱入営血、病位は深い、病情も重い

舌象により「邪気の性質」を区別する

邪気によって、舌に現れる様相が異なる。よって、舌象によって邪気の性質を区別することができる。
例えば黄苔の多くは熱邪、白滑苔は寒邪を主る。
腐膩苔の多くは食積痰濁、黄厚膩苔は湿熱。
舌偏歪多は風邪、舌に瘀斑瘀点が多いと瘀血を現わしていることになる。

舌象 = 邪気の性質

舌象によって「病情の進退」を推測する

苔色と苔質は、正気と邪気の消長変化と、病情の進退を現わしている。
それにより、今後病情がどのように変化していくかを推測することができる。
とくに外感熱病は変化がたいへん速いので、それを察するのにも役立つ。内傷雑病中にあっても、舌象の変化によって病情の進退が反映される。
例えば白帯が白から黄色に転化したり、灰黒に変っていくなどがあれば、病邪が表より裏に入ったことを現わしており、病情が軽いものから重いものになった、または寒より熱化したともと考えられる。また、舌苔が潤から燥に変化したら、多くの場合、熱が次第に盛んになって、津が傷れてきたことを表現している。逆に、舌苔が厚いものから薄く変化したり、燥から潤に転化した場合は、往々にして病邪が次第に退いていき、津液が回復してきたとみることができる。

舌象 = 病状の進退
舌象の変化 = 病状の変化

舌診は望診の一部であること

以上述べてきたように、舌診は古来より今日まで、東洋医学・中医学の診断方法の一つとして重要な位置を占めてきたことがわかり、とても有効な手法であることが理解できると思います。

しかし、そうはいっても、舌診は望診の一部であって全てではないことも頭に入れておかなければいけない。東洋医学・鍼灸・薬膳・漢方薬の臨床では、様々な患者さんに出会い、様々な症状を持っている人が多くありますが、それぞれ体が表す様相は異なりますので、必ずしも舌診が教科書通りに当てはまるわけではないこともある。
たとえば大きな病気を持っている人でも舌状に変化が現れないこともあるし、逆に正常な人においても、異常な舌が現れることもある。

よって、舌診も望診の一部であることを理解し、望聞問切を全面的に活用(四診合参)して、より正確な病態把握に努める必要がある。

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