方剤名方剤学用語(C)東洋医学・鍼灸・漢方辞典 oriental medicine acupuncture

解表剤

解表剤とは?

 この記事のポイント

解表剤は、外感表証のものに使う方剤である。使う時期、使う対象によって、辛温解表剤、辛涼解表剤、扶正解表剤に分かれる。

解表剤の概念

解表剤はどのようなときに使うのか?

 解表剤の作用は、発汗、解肌、透疹(疏達腠理)などである。表証を解除する方剤を解表剤と総称する。八法のなかでは、汗法に当たる。

 体を覆う表皮は身体を守るための壁のようなものであるが、体の外からやってくる外感六淫の邪気が人体を傷るとき、最初にこの表皮に対して攻撃を加える。よって、一般的には表証が出現するとことになる。当然、表皮は一番浅いところ、つまり表面(肌表)にあるわけだから、肌表にある邪気を外に出すことが必要であり、そのために文字通り“表を解く”ための解表剤が用いられることになる。

 『素問・陰陽応象大論』には、「其在皮者,汗而発之」とあるが、これはまさに表証の治療法のことを言っている文章である。逆に言えば、外感六淫の邪気が表皮にあるというタイミングを外してしまうと、その邪気を外に出すことができなくなるということでもある。このタイミングを逃してしまうと、病が治らないばかりか、外感六淫の邪気はさらに奥に入っていくことを避けられず、他証へ変性していくことになるので、弁証は慎重にしなければならない。

 『素問・陰陽応象大論』には、「善治者,治皮毛,其次治肌膚,其次治筋脉,其次治六腑,其次治五臓,治五臓者,半死半生也」とある。ここから考察すると、外感六淫の病の初期においては、解表剤を用いて治療するタイミングは、邪気が皮毛にあるときに限ることがわかる。体の外側を解いて邪気を外に出し、伝変するのを防止する、それにより早期に治癒を目指すことが、解表剤の目的になる。

 よって、外感六淫の邪気を感受して間もなくで、麻疹、瘡瘍、水腫、瘧病、身疼、痢疾といった症状や、舌診で苔白あるいは黄、脈浮などの表証があるものには解表剤が有効ということになる。

 六淫の外邪には寒熱の違いがあり、それを受け止める人体には虚実の分類がある。さらに人体にはもともとの体質や既往症、持病などがあるため、病態はそれぞれ異なることになる。そこで、それらの状況に合わせて、解表剤は辛温解表、辛涼解表、扶正解表の三つに大別される。つまり、表寒証に対しては辛温解表、表熱症には辛涼解表、虚人感受外邪の表証には扶正袪邪を使うことになる。

 解表剤の多くは辛散軽揚の品が用いられるので、久煎しないようにする。なぜならば、久煎すると薬性が耗散して作用が減弱してしまうからである。
 解表剤を服用した後は、風寒を避けたり、衣服を増したり、また発汗を促すようにするとよいものが多い。ただしその発汗も、解表が目的なので、全身にじっとりとかく程度が好ましい。もし汗が偏った部位に出るだけであったり、あるいは大汗淋漓した場合は良くない状況で、このような発汗が適切に行われない場合は病邪が解けていないことなので注意が必要である。また、発汗が過剰になってしまうと気津を消耗しやすく、亡陰亡陽に変化してしまことがあるので要注意である。

 臨床において解表剤を使用するのは、外邪による表証であることが必須である。表邪がいまだに尽きておらず、または裏証が出現したときは、先に解表をしてその後に裏証を治療したほうが良いのか、それとも、表裏双解の方剤を使ったほうのが良いのかを熟慮しなくてはいけない。もし病邪がある程度すでに経過して裏に入っていたり、麻疹がすでに透していたり、瘡瘍がすでに潰れている、虚証水腫、吐瀉失水などになっていたら、どれも解表剤は不適応になる。

解表剤の分類

解表剤を三つに分ける

 解表剤は、辛温解表剤、辛涼解表剤、扶正解表剤の三つに分かれる。

  • 解表剤
    • 辛温解表剤
    • 辛涼解表剤
    • 扶正解表剤
辛温解表剤とは?

 辛温解表剤は、外感風寒表証に適用される。症状としては、悪感発熱、頭項強痛、肢体痠疼、口不渇、無汗あるいは汗出しても依然発熱悪風寒があったり、舌苔薄白、脈浮緊あるいは浮緩など。辛温解表剤に常用される生薬は、麻黄、桂枝、荊芥、防風、蘇葉などである。代表的な方剤は麻黄湯、桂枝湯、小青竜湯、九味羗活湯などである。

辛涼解表剤とは?

 辛涼解表剤は、外感風熱証に適用されるものである。主な症状は発熱、有汗、微悪風寒、頭痛、口渇、咽痛、あるいは咳嗽、舌苔薄白あるいは微黄を兼ねる。脈は浮数などである。辛涼解表剤に常用される生薬は、薄荷、牛蒡子、桑葉、菊花、葛根などである。辛涼解表の代表的な方剤は、桑菊飲、銀翹散、麻黄杏仁甘草石膏湯などである。

扶正袪邪剤とは?

 扶正袪邪罪が適用さるのは体質素虚や外邪を感受して至った表証である。このときは、表を解く必要があり、かつ正気がどの程度残り、どう助けてあげなければいけないかを考慮しなければならない。そこで、補益薬や助陽薬と解表薬の配合や組成を考えていく必要がある。表証を解くようにしながら、正気の虚が影響を受けないようにする。扶正袪邪剤の代表的なものは、敗毒散、再造散、葱白七味飲、加減葳蕤湯などである。

解表剤の代表的なもの

  • 解表剤
    • 辛温解表剤
      ・ 麻黄湯
      ・ 桂枝湯
      ・ 九味羗活湯
      ・ 加味香蘇散
      ・ 小青竜湯
    • 辛涼解表剤
      ・ 桑菊飲
      ・ 銀翹散
      ・ 麻黄杏仁甘草石膏湯
      ・ 升麻葛根湯
      ・ 葱豉桔梗湯

この記事を書いた人

源保堂鍼灸院・漢方薬店薬戸金堂 瀬戸郁保

瀬戸郁保
IKUYASU SETO

鍼灸師・登録販売者・国際中医師

古医書に基づく鍼灸を追究しさらに漢方薬にも研究を拡げています。東洋医学の世界を多くの方に知っていただき世界の健康に貢献したいと思います。
東京の表参道で、東洋医学・中医学に基づいた源保堂鍼灸院・漢方薬店 薬戸金堂を営んでおります。

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