芍薬湯 しゃくやくとう
芍薬湯とは?
この記事のポイント
芍薬湯の方意は、止剤にあるのではなく、治痢の本を治すことにある。芍薬湯の組成の特徴は、気血并治、通因通用を兼ねるところにある。寒熱をともに投じているものの、「熱者寒之」に重きを置いている。一般の清熱解毒をもって湿熱下痢を治すものとは区別するべきである。
芍薬湯の出典
『素問病機気宜保命集』
芍薬湯の分類
- 清熱剤
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芍薬湯の組成
- 芍薬 15~20g
- 当帰 9g
- 黄連 5~9g
- 檳榔 5g
- 木香 5g
- 甘草 5g
- 大黄 9g
- 黄芩 9g
- 肉桂 2~5g
芍薬湯の効能
- 調和気血
- 清熱解毒
芍薬湯の主治
- 温熱剤
腹痛便膿血、赤白相兼、裏急後重、肛門灼熱、小便短赤、舌苔黄膩
芍薬湯の方解
芍薬湯証は、湿熱が腸中に蓄積したもので、気滞失調もある。故に腹痛、裏急後重が現れる。気血瘀滞が膿血と化したり、下痢赤白と化したりする。湿熱内迫下注し、故に小便短赤、肛門灼熱が現れる。
芍薬湯の治法は、調和気血を主として、清熱解毒も兼ねているものである。
芍薬湯 の方解
- 芍薬
芍薬湯の中で重用されている芍薬は、当帰と配伍されることで調和営血をし、甘草と配伍されて緩急止痛する。 - 黄連・黄芩
苦寒燥湿で腸中熱毒を解く。 - 大黄
大黄は黄芩、黄連と配伍されて、清中に瀉を有して熱が下行するように導く(清中有瀉・導熱下行)。 - 木香・檳榔
行気導滞。通因通用を目的としたものである。 - 肉桂
肉桂は、苦寒の生薬が多いこの方剤の中にあっては「反佐」になるようにみえるかもしれない。しかし、苦寒薬が多いと陽を傷って氷伏湿熱邪となってしまうので、それを補うために肉桂が入っている。
これらを総合してみてみると、「行血」と「調気」をうまく配伍することによって、気血瘀滞の赤白痢に対処していることが分る。原著には、「『経」曰瀉而便膿血、気行而血止.行血則便膿自愈,調気則後重自除.」とある。
以上を見ていくと、芍薬湯の方意は、止剤にあるのではなく、治痢の本を治すことにある。芍薬湯の組成の特徴は、気血并治、通因通用を兼ねるところにある。寒熱をともに投じているものの、「熱者寒之」に重きを置いている。一般の清熱解毒をもって湿熱下痢を治すものとは区別するべきである。
芍薬湯の附方
黄芩湯
出典
『傷寒論』
組成
黄芩(9g)、芍薬(9g)、甘草(3g)、大棗(4枚)
効用
清熱止痢、和中止痛
主治
邪熱入裏
身熱口苦、腹痛下痢、あるいは熱痢腹痛、舌紅苔黄、脈数
参考資料
この記事を書いた人
瀬戸郁保
IKUYASU SETO
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
古医書に基づく鍼灸を追究しさらに漢方薬にも研究を拡げています。東洋医学の世界を多くの方に知っていただき世界の健康に貢献したいと思います。
東京の表参道で、東洋医学・中医学に基づいた源保堂鍼灸院・漢方薬店 薬戸金堂を営んでおります。
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