人参 にんじん
人参とは?
この記事のポイント
人参は大補元気で、漢方の中でとても重要な位置を占める生薬である。気虚欲脱、脾気不足、肺気虧虚、津傷口渇や消渇、さらには心神不安、失眠多夢などにも用いられる。
人参の出典
『神農本草経』
人参の別名
白参、紅参、野山参、吉林参、別直参
人参の性味・帰経
- 性味
苦・微苦
微温 - 帰経
脾経、肺経
人参の効能
- 大補元気
- 補脾益肺
- 生津止渇
- 安神益智
人参の効能・作用
1.気虚欲脱
大出血や大吐瀉など、疾病で極度に元気が虚した場合は、どのような症状で体虚欲脱、脈微欲絶の証が現れる。元気は人体の根本之気であるが、人参は大補元気をすることができるため、このような証においては挽救虚脱の効果がある人参が使われる。
人参を単品で大量に濃煎して服用する独参湯がある。これは補気固脱に有効な良方となる。
汗出肢冷などの亡陽現象がみられるものに対しては、附子も加えて回陽作用を増強する人参附子湯がある。
2.脾気不足
脾胃は後天の本であり、生化の源である。
脾気不足となって生化無力になると、倦怠無力、食欲不振、上腹痞満、嘔吐泄瀉などの証が出現する。
人参には大補元気の他に、益脾気の作用もある。このことから脾気不足の証にも適用され、白朮、茯苓、炙甘草などの健脾薬と一緒に用いられる(例:四君子湯)。
3.肺気虧虚
肺は主気の臓である。肺気虧虚すると呼吸短促が現れる。そして行動乏力、動輒気喘、脉虚、自汗などの症状も出てくる。人参は大補元気で肺気を益すことから、肺気虧虚の証にも有効である。胡桃、蛤蚧などの生薬と組み合わせた人参胡桃湯、人参蛤蚧散のようなものがある。
4.津傷口渇、消渇
人参は益気生津止渇をすることができる。熱病になると気津両傷となるが、身熱して渇したもの、汗多、脈大無力の証にも人参が適応となる。
石膏、知母、甘草、粳米と人参を一緒に用いる白虎加人参湯がある。
清熱益気、生津止渇、熱傷気陰、口渇多汗、気虚脈弱には麦門冬、五味子と人参で組成される生脈散があり、益気養陰、止渇、止汗の効果がある。
消渇症の治療に用いられるものとしては、生地黄、玄参、麦門冬といった養陰生津の生薬と配伍して益気生津の効果を発揮する。
5.心神不安、失眠多夢、惊悸健忘
人参は大補元気することができるが、その作用によって安神増智の効能も有している。故に、気虚血虧によって引き起こされる心神不安、失眠多夢、惊悸健忘といった証候に適用される。
多くは当帰、龍眼肉、酸棗仁などの養血安神薬と一緒に用いられる(例:帰脾湯)。
6.その他
このほかに、血虚や陽痿などの証に用いられる。
血虚には熟地黄、当帰などの補血薬と一緒に用いられて、益気生血でもって血虚の治療を増強する。
陽痿には鹿茸、胎盤などの補陽薬が一緒に用いられることで、益気壮陽の効果に至る。
体虚外感あるいは裏実正虚の証にも用いられ、解表、攻裏薬と同時に用いて扶正袪邪をすることができる。
人参の用量用法
5~10g
使用注意
実証、熱証にして生気不虚には忌服。
反藜芦、煨五靈脂、悪皂莢、均忌同用
人参を服してお茶を飲んだり大根を食べると薬効に影響が出るので注意が必要である。
附薬
人参葉
性味: 微寒・寒
効能: 解暑邪、生津液、降虚火
適応: 暑熱口渇、熱病傷津、胃陰不足、虚火牙痛などの証候
用量: 5~10g
使用: 煎服
参考資料
この記事を書いた人
瀬戸郁保
IKUYASU SETO
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
古医書に基づく鍼灸を追究しさらに漢方薬にも研究を拡げています。東洋医学の世界を多くの方に知っていただき世界の健康に貢献したいと思います。
東京の表参道で、東洋医学・中医学に基づいた源保堂鍼灸院・漢方薬店 薬戸金堂を営んでおります。
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