加減葳蕤湯 かげんいずいとう
加減葳蕤湯とは?
この記事のポイント
加減葳蕤湯は、素体陰虚、感受外邪に対して使われる方剤。効用は、滋陰清熱、発汗解表である。
出典
『通俗傷寒論』
分類
- 解表剤
- 扶正解表 ← 加減葳蕤湯
組成
- 生威蕤 9g
- 生葱白 6g
- 桔梗 5g
- 東白薇 3g
- 淡豆鼓 9g
- 蘇薄荷 5g
- 炙甘草 1.5g
- 紅棗 2枚
※用量は、中国の教材である『方剤学』(上海科学技術出版社)を採用しています。日本用とは用量や組成が異なることもあるので、注意してください。
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効用
- 滋陰清熱
- 発汗解表
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主治
素体陰虚、感受外邪
頭痛身熱、微悪風寒、無汗あるいは有汗不多、舌赤脉数、咳嗽心煩、口渇、咽乾などの症状
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組成・方解
陰虚について
陰虚のものは内熱を生じやすく、風熱外邪を感じると、頭痛身熱にして微悪風寒、咳嗽咽乾にして痰稠難出となり、心煩口渇にもなっていく。
ただし、舌赤・脈数は素体陰虚で内熱があるための症状である。
『温病条辨』の「汗論」には、「汗之為物,以陽気為運用,以陰精為材料.・・・其有陽気有余,陰精不足,又為温熱昇発之気所煉,而汗自出,或不出者,必用辛涼以止其自出之汗,用甘涼甘潤培養其陰精為材料,以為正汗之地」
方解
- 君薬:威蕤
無汗あるいは有汗不多に対しては、甘平柔潤の威蕤(玉竹)を用いる。
滋陰益液にして、汗の源を資し、肺燥を潤する。 - 臣薬:葱白・淡豆鼓・薄荷・桔梗
解表宣肺、止咳利咽 - 臣薬:白薇
涼血清熱で煩渇を除く。 - 佐薬:甘草・紅棗
甘潤滋脾
以上を配伍することによって、滋陰清熱しても解表を妨げず、発汗解表しても陰気を傷つけない。故に、陰虚にして風熱表証を有するものに適用される。
このことから、冬温初期、咳嗽咽乾、痰不易出にも適応できる。
加減葳蕤湯になるまで
加減葳蕤湯は、『備急千金要方・巻九』にある葳蕤湯に加減をしたものである。
葳蕤湯、加減葳蕤湯の両方ともに、葳蕤、白薇、甘草が入っている。
葳蕤湯には、麻黄、独活、川芎、青木香、杏仁、石膏が入っているので、発表清裏、気血并治に重きが置かれている。
一方の加減葳蕤湯は、麻黄や独活などが入っておらず、葱白、淡豆鼓、薄荷、桔梗、紅棗が加えられている。これは、解肌清熱に養陰の効用を有する軽剤である。
このように、葳蕤湯と加減葳蕤湯は、名前はとても似ているが、その効用にはかなりの違いがある。
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附方
葳蕤湯
出典
『備急千金要方』
組成
葳蕤、白薇、麻黄、独活、杏仁、川芎、甘草、青木香、石膏
もし、一寒一熱すれば、朴消、大黄を加える。木香がなければ麝香でも。
効用
疏風解表、清熱養陰
主治
風温の病、脉は陰陽ともに浮
汗出体重、息は必ず喘、形状は不仁、黙々として眠れず、これを下せば小便難。汗を発すれば必ず譫語、焼鍼を加えれば耳聾難言、但し吐下すれば遺失便利。
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参考資料
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この記事を書いた人

瀬戸郁保
IKUYASU SETO
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
古医書に基づく鍼灸を追究しさらに漢方薬にも研究を拡げています。東洋医学の世界を多くの方に知っていただき世界の健康に貢献したいと思います。
東京の表参道で、東洋医学・中医学に基づいた源保堂鍼灸院・漢方薬店 薬戸金堂を営んでおります。
その他の東洋医学・中医学用語
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