防己黄耆湯 ぼういおうぎとう
防己黄耆湯とは?
この記事のポイント
防己黄耆湯は袪湿剤の中でも、利水滲湿に分類される。防已と黄耆が君薬となって、益気袪風、健脾利水の効果を発揮する。
防己黄耆湯の出典
『金匱要略』
防己黄耆湯の分類
- 袪湿剤
- 燥湿和胃
- 清熱袪湿
- 利水滲湿 ← 防己黄耆湯
- 温化水湿
- 祛風勝湿
防己黄耆湯の組成
- 防已 12g
- 黄耆 15g
- 甘草 6g
- 白朮 9g
- 大棗 一枚
- 生姜 四片
防己黄耆湯の効能
- 益気袪風
- 健脾利水
防己黄耆湯の主治
- 衛表不固による風水あるいは風湿に対して
汗出悪風、身重、小便不利、舌淡苔白、脈浮
防己黄耆湯の方解
防己黄耆湯が治す風水、風湿とは、正虚表気不固で、外から風邪を受けて肌表に水質が鬱した状態になった証である。表虚不固が原因で汗出悪風になっている。また、水湿停滞肌腠であるため、身体重着、小便不利にもなる。苔白脈浮は、風邪が表にあることを示している。風邪が表にあれば、腠理が開いて汗が解ければ症状は良い方向へ行くわけだが、表が解けずに邪がそのままで去らずに、さらにその外を解きたくても表の気がまだ虚である場合は、強引に汗を出すことは出来ない。もし強引に汗を出すようなことをしたら、その表を重大に傷ってしまって、かえって風邪を招いてしまうことになる。そのために、解表除湿法を短用することができないわけである。そこで、益気固表と袪風行水を併行しなければならない。
防己黄耆湯 の方解
- 防已
袪風行水 - 黄耆
益気固表かつ行水消腫
防已と黄耆の二薬が配伍されることによって、扶正駆邪の作用がよりはっきりと現れるので、ともに君薬ということになる。 - 白朮
臣薬は白朮で、補気健脾で脾の運化作用を助ける。黄耆と一緒に用いることで衛の効果が強化される。 - 甘草
培土和中。調和諸薬。 - 生姜・大棗
調和営衛
以上の六薬が相合することで表にある気を固くすることができ、風邪を除くことができる。また水道通利、脾気健運するため、風水、風湿による諸証は自ずから解けることになる。
防己黄耆湯の附方
防已茯苓湯
出典
『金匱要略』
組成
防已(9g)、黄耆(9g)、桂枝(9g)、茯苓(18g)、甘草(6g)
水煎服用
効用
益気通陽利水
主治
皮水、水気が皮膚中にあり、四肢摂摂と動ずるもの。
防己黄耆湯と防已茯苓湯との違い
防己黄耆湯と防已茯苓湯は、両方剤ともに水腫に対する常用方である。
防己黄耆湯は風水表虚証で、汗出悪風、脈浮身重のものに用いるが、一方の防已茯苓湯は、皮水にして陽虚を兼ねるもので、四肢や皮膚に腫盛が見られ、四肢が摂摂と動ずるものに用いられる。
参考資料
この記事を書いた人
瀬戸郁保
IKUYASU SETO
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
古医書に基づく鍼灸を追究しさらに漢方薬にも研究を拡げています。東洋医学の世界を多くの方に知っていただき世界の健康に貢献したいと思います。
東京の表参道で、東洋医学・中医学に基づいた源保堂鍼灸院・漢方薬店 薬戸金堂を営んでおります。
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