麦門冬湯 ばくもんどうとう
「麦門冬湯」とは?
麦門冬湯の出典
『金匱要略』
麦門冬湯の分類
- 治燥剤
- 軽宣潤燥
- 滋陰潤燥 ← 麦門冬湯
麦門冬湯の組成
※各生薬の用量は、『方剤学』(上海科学技術出版社)第45版による。
麦門冬湯の効用
- 滋養肺胃
- 降逆和中
麦門冬湯の主治
(1)肺陰不足
咳逆上気、喀痰不爽あるいは咳吐涎沫、口乾咽燥、手足心熱、舌紅少苔、脉虚作
(2)胃陰不足
気逆嘔吐、口渇咽乾、舌紅少苔、脉虚数
麦門冬湯の組成・方解
麦門冬湯の証の解説
麦門冬湯が治す証は、肺胃陰虧、虚火上炎、気機逆上したものである。
『金匱要略』に、「火逆上気、咽喉不利、上逆下気、麦門冬湯主之」とある。
この場合の咽喉不利の原因は、①肺胃陰傷で濡潤できないもの、②虚火上炎、灼津碍気の2つがある。
そこで、治療は肺胃之陰を滋養することになる。陰津が充足されたら虚火は自ずと降りてくることになる。
方解
以上のことから・・・
麦門冬が重用されて君薬になる。
麦門冬の甘寒の性質で肺胃の陰を滋養して、かつ虚火を清ずる。
半夏は臣薬となる。
その意図は降逆化痰にある。半夏の性質は燥と言っても、大量の麦門冬が配伍されているので、燥性は減少されており、降逆の性質が残ることになる。そのため、半夏の肺胃虚逆の気を良く降ろす作用がはたらき、かつ、麦門冬を滋して、にさせないようにする。
人参は佐薬で、補益中気する。
麦門冬と配伍されて、補気生津の作用がある。
さらに粳米、大棗、甘草は補脾益胃なので、中気健運する。
これにより、津液は自ずとよく肺に上輸されることになり、胃はその養いを得て、肺はその潤を得ることができる。これはまた、「培土生金」の意味もある。
以上のことを概観してみると、6種類の生薬には主従の序列があることが分かる。それにより潤降あいよろしく肺胃を滋して、また逆気を降ろすことができる。
虚熱肺痿、咳唾涎沫に対しては正治の方となる。そして胃陰不足、気逆嘔吐に対しても妥当な剤となる。