麻杏甘石湯 まきょうかんせきとう
麻杏甘石湯 まきょうかんせきとう
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出典
『傷寒論』
分類
- 解表薬
- 辛涼解表 ← 麻杏甘石湯
組成
※用量は、中国の教材である『方剤学』(上海科学技術出版社)を採用しています。日本用とは用量や組成が異なることもあるので、注意してください。
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効用
- 辛涼宣泄
- 清肺平喘
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主治
外感風邪
身熱不解、咳逆気急鼻痛、口渇、有汗あるいは無汗、舌苔薄白あるいは黄、脈は滑にして数
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組成・方解
風熱襲肺、あるいは風寒が鬱して化熱し肺に壅遏したもの
肺中の熱が盛んになって気逆津傷すると、有汗しても身熱が解けないので、それが喘逆気急を引き起こす。甚だしければ、鼻翼が煽動するくらいになる。
そして、口遏喜飲、脈は滑にして数になる。
このようなときは、急いで清泄肺熱に当たらなければならず、そうすることで、自然と熱清気平して喘喝もまた癒える。
方解
- 君薬は麻黄になる。
麻黄はよく宣肺して邪熱を漏らすので、“火鬱発之”の原則から麻黄が君薬になる。 - 石膏
ただし、麻黄の性質は温なので、辛甘大寒の石膏を臣薬として配伍する。麻杏甘石湯の場合、石膏は麻黄の倍以上を使うことになるが、それは、宣肺して熱を助けずにして、清肺をして邪を留めないようにするためで、肺気粛降有権で喘急は平じていく。相制して用をなすためである。 - 杏仁
肺気を降ろすので、佐薬として用いて、麻黄と石膏の清肺平喘を助ける。 - 炙甘草
益気和中して石膏と合して生津止渇する。
さらに寒温宣降の間を調和するので、佐使薬となる。
総合してみてみると、麻杏甘石湯は四味しかない。
しかし、その配伍や用量などは実に巧みな組合せで、温性の麻黄に寒性の石膏を配して肺熱を治すというのも霊妙である。
麻杏甘石湯は『傷寒論』にあるもので、太陽病で発汗しても未だに癒えないもので、風寒が裏に入って化熱したもの、つまりは原文でいう“汗出而喘者”に対応する。
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その他の考察
後世には、風寒化熱、あるいは風熱所傷で、肺中熱盛、身熱喘急、口渇脈数、有汗・無汗は問わないという証候の場合に、麻杏甘石湯の加減をもって治療し効果が出るという記載が出てくる。
- 肺中熱盛、蒸迫津液、固然有汗でもし津液大傷、汗少あるいは無汗
→ 石膏の量を加重、あるいは炙桑皮、芦根、知母の属を加える。 - 無汗にして悪寒があるときは、邪がすでに裏に入って化熱しているといっても、表にある風寒は未だに尽きていない。あるいは風温にして、挟風寒にいたったものは、解表のものを適宜加えるのも良い。
→ 荊芥、薄荷、淡豆鼓、牛蒡子など - 清泄肺熱を主となして同時に用いると、皮毛が開き、肺熱がもれて癒える。
麻杏甘石湯を用いるときは、“汗出而喘”に必ずしもこだわる必要はないが、ただし、無汗の理由を細心に審らかにし、清熱生津の品を加えたり、辛散解表を加えたりしてみると、それぞれの薬証相当の手応えを感じるはずである。
附方
越婢湯
出典
『金匱要略』
組成
麻黄(9g)、石膏(18g)、生姜(9g)、甘草(5g)、大棗(5枚)
効用
発汗利水
主治
風水悪風、一身悉腫、脈浮不渇、続自汗出、無大熱
麻杏甘石湯と越婢湯の違い
麻杏甘石湯と越婢湯は、両方とも有汗のものに対して使うものである。
麻黄は石膏と配伍されて、清肺泄熱する。
ただし、越婢湯には“一身悉腫”とあるので、水が肌表にあることに有効とするため、麻黄の容量を増やしている。
併せて生姜を配するのは、肌表の水を発泄することを目的としている。
喘はないので、杏仁は除く。
大棗を加えるのは、滋肺のため。
生姜は調和営衛のため。
麻杏甘石湯は、張仲景が遺した名方剤の一つであるが、ただし、後人はこの証の中にある“不渇”に疑問を持つものも少なくない。というのは、石膏が入っているので、これは“渇”に対して用いられると考えるのが妥当だからである。
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