方剤名方剤学用語(C)東洋医学・鍼灸・漢方辞典 oriental medicine acupuncture

温脾湯 おんぴとう

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「温脾湯」とは?

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温脾湯の出典

『備急千金要方』

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温脾湯の分類

  • 瀉下剤
    • 寒下
    • 温下   ←温脾湯
    • 潤下
    • 逐水
    • 攻補兼施

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温脾湯の組成

  • 大黄(12g)
  • 附子(9g)
  • 乾姜(6g)
  • 人参(9g)
  • 甘草(3g)

※各生薬の用量は、『方剤学』(上海科学技術出版社)第45版による。

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温脾湯の効用

  • 温補脾陽
  • 攻下冷積

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温脾湯の主治

脾陽不足。
冷積便秘、あるいは久痢赤白、腹痛、手足不温、脉沈弦

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温脾湯の組成・方解

脾陽不足による大便秘結(便秘)

温脾湯が適応するのは、脾陽不足で寒が中より生じた状態で、さらに生食・冷食を好んで食することで、冷積内停に至り、腸管を阻む。よって大便秘結する。
もし寒湿が久しく留まって冷積がそのままでいると、脾気虚弱にも至るため、下痢赤白不止が現れる。不通であれば痛み、腹痛して手足不温、脈沈弦となる。
これらはみな中気虚寒、冷積内停の象である。
このようなときに、単純に温補脾陽して裏寒を除こうとしても、積滞を取り除くことは難しい。また、単純に予め攻下しておこうにも、更に中焦を傷って寒積させてしまうことにもなるので、無闇と攻下することもできない。
そこで、附子と乾姜が用いられてることによって、温陽祛寒するようにしている。

方解

  • 附子乾姜:温陽祛寒
  • 人参甘草:人参と甘草が合わさって、益気補脾
  • 大黄:蕩滌積滞

諸薬協力して寒邪を去り、積滞を流して諸証を癒やすことができる。

大黄附子湯(大黄、附子、細辛)から細辛を除き、乾姜、人参、甘草を加えたものという解釈もできるし、四逆湯(甘草、乾姜、附子)に人参、大黄を加えたものとも解釈ができるが、どれも温熱薬を以て主となしていることがわかる。故に、温下の方剤に属することになる。
ただし、温脾湯は益気も兼ねるので、久痢気虚の証にも良い。
大黄附子湯は気不虚にして冷積が甚だしい証に良い。

三つの温脾湯

温脾湯には3種類ある。その三つを見てみる。

①『備急千金要方』十五卷『冷痢門』の温脾湯
ここで取り上げた温脾湯に比べると、桂心が多く、甘草が少ない。「主治略同」とあるが、寒証が重くて、衝逆の証候を兼ねるものにより適応する。

②『備急千金要方』十三卷『心腹痛門』の温脾湯
ここで取り上げた温脾湯に、当帰、芒硝、沢潟を加えたもので、寒積便秘を主治する。「腹痛、臍下紋結、纏臍不止」とある。

③『類証普済本事方』の温脾湯の温脾湯
組成は附子、乾姜、桂心、甘草、厚朴、大黄である。この組成を見ると、温脾湯(甘草、大黄、乾姜、人参、附子)から人参を去り、厚朴を加えたものというのが分かる。主治は、「痼冷在腸胃間、連年腹痛泄瀉、休作無時」とある。この温脾湯と『千金方』の温脾湯は同属の温下剤と言えるが、『千金方』の温脾湯は、下痢赤白、積滞が甚だしいものに使う。故に大黄を重用し、攻下積滞する。『心腹痛門』の温脾湯は、更に芒硝を加えているのでよりその効果を助けている。痢が久しく、脾胃虚寒、陽気衰微によっては、人参、甘草、乾姜、附子を用いて温補脾陽する。
『類証普済本事方』が治すところは、冷積泄瀉、寒重積軽である。故に温中を重視するので、大黄の攻下を用いるといっても、総量からみたら二十六分の一を占めるに過ぎない。大黄を使うと言っても、配伍の量がそれぞれ異なることは方剤の性格による。それぞれの生薬がどのような効力を発揮するか、また発揮させたいかは、方剤の中での配伍や用量で調整するのは当然なことで、実実虚虚といった誤治をしないように注意しなければならない。

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参考資料

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