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『東洋見聞録 医の巻』

  • 著者 川口澄子
  • 発行 ピエブックス
  •  お薦め度 ☆☆☆☆☆
  • 東洋医学・鍼灸・漢方について興味のある一般の方にお薦めの一冊です。ほんわかしたイラストや文章がこぎみよく楽しい一冊です。専門家にとっても、患者さんと話すときのネタ本になると思います。

この本は、専門家ではない著者が、自分の中医学・漢方体験を糸口にしながら、東洋医学やその周辺を学んでいく、まさに旅的、見聞録的な内容になっています。
そのため本書は、鍼灸師のような専門家にとっては、直接臨床的に役立つものではありません。しかし、専門家が気付かない素人なりの疑問点や、東洋医学を試そうとするきっかけを垣間見ることができますので、東洋医学を初めて受診しようとする方の気持ちを知ることができますし、、また、神農のお話や、正倉院のお話しなどは、患者さんとの会話のネタとして面白いかもしれません。そういった意味では、治療院の待合室にでも置いておくのが似合うかもしれません。

本書を必要とするのは、東洋医学に興味を持ち始めた方や、東洋医学の治療(鍼灸・漢方薬・按摩など)を受けてみようと思っている方など、初歩の初歩の方々ではないでしょうか。文章も面白おかしく、イラストも楽しいので、特にこの段階の方にはお勧めです。
監修者には、中国政府より中医師の認定を受けている幸井俊高(こういとしたか)さんが名を連ねていますので、内容に大きな間違いはありません(マクロビオティックのことが混合されていたり、少々中医学や漢方という言葉が強調して区別されているところはありますが)ので、内容は確かなものを感じます。しかし、監修者の方が漢方薬専門の方だからなのか、鍼灸の話題が極端に少ないのは気になりました。これでは、全く知らない方が読んだら、東洋医学(本書では中医学と漢方に分けていますが)は漢方薬が主流であって、鍼灸は別物のような印象を受けてしまいます。バランス的には、もう少し鍼灸も取り上げて欲しかったと思いますが、小さな本で一つの話題に絞ることも必要だったのだと思いますので、これはこれでいいのかもしれません。
いずれにせよ、文章やイラストなどがうまくまとまっており、初歩の初歩の方にとってはおすすめのいい本です。巻末の参考図書一覧は、初歩的な専門家にとってもいい資料ではないかと思います。