• 著者 葉舒憲・田大憲
  • 発行 青土社
  •  お薦め度 ☆☆☆☆☆
  • 中国思想には、数が出てきます。例えば『黄帝内経』が八十一編あるのは、重陽の数である九によるものです。また、五臓六腑、奇経八脈など、数字と身体、数字と医学の関係も深くあります。本書はそういった中国思想にある数の思想に焦点を当てたものです。

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古医書の中に、「易を知らざる者は足りず。」という言葉があります。これは、医学を学ぶためには、易を学ぶ必要があることを説いたものです。医学という人体を扱う科学に、卜占で使われる易を知らなければいけないというのは、どうも不釣合いに思われるかもしれません。また、そのことから古医書や東洋医学は今ひとつ信憑性がかけるものに感じるかもしれません。

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易とは万物の移り変わりを示したものですが、例えば身体というものも季節によって変化をしていきますし、病気もまた急性、慢性といった変化をしていきます。この身体や病気の変化の移り変わりを知るためにも、変化を捉えるための易の考え方が医学にも必要となります。そしてさらに言えば、この移り変わりの基には「数」が関係しています。易を知るとは、つまりこの「数」が持っている意味を学ぶことに他ならず、数を学ぶことが易の始まりでもあり、そしてその「数」を臨床に応用することが、東洋医学ということにつながっていきます。

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例えば陰陽というのは、陰と陽という二元的な分類なので、「2」という数字が根底にはあります。また、五行というものは、読んで字のごとく「5」という数字が背景にあります。このように、すでに2や5といった数字が意味を持っているために、この数字を分類の手段として利用することができるわけです。では、さらにそのずっと前、数字に意味を持たせるさらにずっと前の原初的な古代に生きる人々の心象風景はいかなものであったのでしょうか。数字が持っている意味や背景を知ることは、『黄帝内経・素問』『黄帝内経・霊枢』などを読み解くためにとても重要になります。

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本書はタイトルに“神秘”という言葉がついておりますが、決して数字をオカルト的のように扱おうとはしていません。豊富な文献を丹念に引用しながら、数字が持っている真相に迫っていきます。本書の章を少し挙げてみますと、「万物は一に始まる」「太極は両儀を生ず」「天、地、人の三才」など数にまつわるお話しが一章ごとに繰り広げられています。東洋医学・鍼灸医学に携わるものとして、五行に関する章「五行、日月を照らす」は特に必読です。