ニーダム・コレクション (ちくま学芸文庫)
ジョゼフ ニーダム
筑摩書房
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中国の科学と文明〈第1巻 序篇〉
ジョゼフ ニーダム
思索社
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西洋と東洋では、その文化や科学の発達の歴史に大きな隔たりがあるように思います。地続きの大陸であり、シルク=ロードなどを通してお互いに交流があったにもかかわらず、この隔たりは大きなものがあります。中国の明の時代に入りますと、宣教師が中国にもやってきて、西洋の文物を移入してきます。中国はそれらに影響を受けながらも、独自の文化的発展を手放すことはありませんでした。
これは医学にも言えることです。現在においてなお、これだけ現代医学が発達している中においても、古代から続く鍼灸や漢方薬という医学が、現代にあってもこうして医療としてその効果が認められ、普及しているというのは驚きでもあります。しかし、生活の一部としてずっと浸透してきた中国人にとっては、この事実は驚きでも、特別なことでもなく、生活の一部として当たり前のことなのかもしれません。

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中国の文化が西洋に与えた影響はたくさんあります。中国の三大発明として、紙、羅針盤、火薬が挙げられますが、これは西洋に大きなインパクトを与え、大航海時代への幕開けを導きました。他にも文化、技術的に、中国の文物が西洋に与えた影響は数多くあります。しかし中国はあくまで実用的なことにこだわり、またそのこだわりが西洋との発達の違いを生み出しました。一般的には、中国の科学史は、いわゆる科学的な思想に至らなかったと批評されることもありますが、仮のその指摘が本当だったとしても、それは決して中国の文化や技術が西洋のそれと比較して劣っていたことではありません。むしろある面においては、劣っているのではなく、西洋の文物を凌駕し、先んじていた学問や技術もたくさんあります。本書では西洋文化の先端性を強調する現代の文明観の偏見に異を唱え、中国の文化史のすばらしさを伝えるものです。

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本書は西洋と中国の違いや、中国文明の歴史や、その優れた面などを語っており、とても参考になる部分がたくさんあります。著者はイギリス出身で、人生の前半を生化学者として過ごし、後半生を中国文化史に注いだ方です。西洋人から見た中国文明という点からも、面白い視点がたくさんあるかと思います。

ジョゼフ・ニーダム
1900~1995を生きる。イギリス・ロンドン出身。生化学研究を経て、戦後は中国の科学技術史に専念。著書『中国の科学と文明』は、「20世紀最大の学術的業績」とも評されている。その一方でユネスコの創設にも関わり、1946~48年には、初代自然科学部長を勤めた。