• 著者 冨谷至
  • 発行 小学館
  •  お薦め度 ☆☆☆☆
  • タイトルの通り、教科書には書いていない中国の歴史や文化の50のお話が詰まっております。臨床に直接は関わりませんが、古医書を読む上で知っておきたい歴史のお話もあったりと、参考になる一冊です。

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東洋医学・鍼灸治療の起源は、言うまでもなく、中国にあります。
東洋医学・鍼灸治療が効くかどうかは、言うまでもなく、治療者の勉強(学問)と技術の研鑽にあります。

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中国の歴史を知ることは、直接的に東洋医学や鍼灸治療を学ぶことにつながるわけではありません。しかし、中国発祥の医療である東洋医学・鍼灸治療をせっかく勉強しているのですから、中国の歴史を知り、中国に触れるということは決して無駄なことではなく、自分の中にある“知る”喜びを育てることになると思います。東洋医学・鍼灸治療は、多くの人が歴史の紐をつむぎながら継承してきた歴史があります。『黄帝内経』という原典をベースにしながら、その時代、その社会に合う形で原典は解釈を重ねて生き返り、そして再び次の世代へ受け継がれていく、まさに歴史の中で、人々の中で育まれた医療なのです。
例えば李東垣(りとうえん)の『脾胃論(ひいろん)』という古医書がありますが、これは、漢民族が北方から圧迫されて、戦乱が続いた時代に書かれたものです。この時代は戦乱のために心は常に不安と悲しみに暮れ果てていましたので、内傷(ないしょう)という概念が強調された時代でした。『黄帝内経』にすでにあった内傷の概念を、さらに発展させ、一つの病因論にしたのは、中国の歴史の要請、そしてその時代に生きる人々の要請があったからとも言えます。

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この『教科書では読めない中国史』は、タイトルどおり“教科書では”読めないようなものを知ることができます。例えば第一章第一話にある“ひとりにたくさんの名前がある”は、中国人の名前に号があったり、字(あざな)があったりを解説しているのですが、上述した李東垣にも、李杲(りこう)という呼び名があります。それはどうしてか?・・・ということを知ると、古医書の世界もまた楽しく、そして古医書を探す時の資料にもなります。患者さんに古医書の世界を紹介する時にも、まとまった話が50もある本書はとても役に立つと思われます。