• 執筆・監修 代田文彦 出端昭男 松本丈明
  • 発行 医道の日本社
  • 価格 6930円(税込み)
  • お薦め度 ☆☆☆☆☆
    鍼灸臨床家は、とかく治す方に気を取られがちです。もちろんそれも大事です。しかし、その一方で、誤治をなくすことも大切です。誤治をなくす、つまり鑑別力をつけることに尽きます。本書は、鍼灸の不適応疾患という、なかなか取り上げるのに勇気がいる分野をまとめた好著です。

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鍼灸師が気をつけなければいけないことは、自分の治療技術への過信ではないでしょうか。その過信はやがて誤診に繋がることもあるので、常に自分の実力を省みていないといけません。

スポーツ疾患のように、ある程度来院する患者さんの層が限られているときは誤診は少ないと思いますが、内科的な疾患まで幅広く対応している鍼灸師のところには、様々な状態の患者さんが訪れます。この時に自分の腕に謙虚であればいいのですが、時に鍼灸師は天狗になりがちなところがあり、「鍼灸で治せる」「自分なら治せる」とついつい過信をしてしまいます。鍼灸治療の適応とはどの範囲なのか?自分の手に負える範囲であるのか?そういった問いかけをしながら対応することが必要です。しかしながら特に脈診を主体とする古典的な治療をしている先生の中には、脈診や古典的な治療へ埋没してしまって、肝心な鑑別がなおざりになってしまうことが多いように思います。誤診をしてしまうと、その鍼灸師自身の社会的地位を危うくしてしまいますし、何よりも患者さんが的確な治療を受ける機会を失ってしまいます。

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以上のことを考えるに、鍼灸の適応と不適応をしっかりと理解しておく必要があります。しかしなかなか臨床をしながら学ぶことは困難です。何故ならば、臨床は失敗が許されないからです。そこでこの『66症例から学ぶ 鍼灸不適応疾患の鑑別と対策』は、経験豊富な鍼灸師の方が、自らの体験を披露しているので貴重な症例集となります。本書は、鍼灸のことを客観的に観ており、内容も西洋医学的な話が多いので、そういった知識を補いたい方にもお薦めできる一冊です。また、古典的な治療(経絡治療など)に固執してしまっている方にとっては、新しい視点をもたらしてくれると思います。誤診をしないためにも、流派を問わず、鍼灸師にとってこの一冊は必携ではないでしょうか。

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