日本の鍼灸史を紐解くと、必ずお灸の名人である澤田健先生の名前が出てきます。
その澤田先生の手技は、「澤田流太極療法」と呼ばれ、一時代を築いた流派です。
澤田先生自身は本を書いたことがないそうなですが、その治療内容は代田文誌先生の書籍から垣間見ることができます。
澤田流太極療法はとてもシンプルな配穴なので、臨床経験がない初歩の人でも入門しやすい内容になっています。

ここでは、そのうちの二冊をご紹介いたします。

一冊目の方は、代田文誌先生が、澤田健先生の治療院で見学させてもらっていたときの覚書きなので、澤田先生の言動がとても印象に残ります。

二冊目は、ツボの解説書。澤田先生や代田先生の経験などが入っており、今でも臨床に役立つ一冊となっています。

  • 著者 澤田健 代田文誌
  • 発行 医道の日本社
  • お薦め度
    ☆☆☆☆
    お灸の名人であった澤田健先生の治療風景がよみがえるような一冊です。澤田流太極療法と呼ばれる選穴の基本を学ぶことができます。鍼灸を学び始めた初心者の方から読める本です。

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昭和初期から戦前にかけて、治療院前に門前市をなすほどに活躍したと言われるお灸の名人がいました。横山大観の腸チフスを治したという逸話もあり、また、経絡治療家である丸山昌朗は、沢田先生とそのお弟子さんであった城一格によって病を治癒してもらい、その後医者になりながらも、その恩に報いるために、鍼灸治療に専念したそうですが、沢田先生の周りにはそういったエピソードが尽きなかったようです。そんな沢田先生の治療をそばで見ていた通い弟子の一人が、著者である代田文誌です。代田文誌が通い弟子として沢田先生の治療の様子を観察し、その治療の様子を記録してたのが本書『鍼灸眞髄』です。代田文誌は歌人でもあり、文章を記すのが好きだったようで、その力量が本書にも発揮されています。

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沢田先生が好んで使った三つの経穴は、「中かん」「左陽池」「百会」ですが、これらの経穴は症状や病気を問わずに、身体全体を整えるものとして常用され、沢田先生の灸治療は、“沢田流太極療法”と名づけられることになりました。この代田先生の聞き書きである『鍼灸眞髄』からは、名人・沢田先生の灸の醍醐味をうかがい知ることができ、また臨床の様子などを垣間見ることができます。鍼灸初期の頃には、まず特効穴を学ぶことが求められることが多いですが、お灸による経穴を学ぶには好著だと思います。

 

  • 校訂 澤田健
  • 著者 代田文誌
  • 発行 鍬谷書店
  • お薦め度
    ☆☆☆☆
    初版は昭和15年で、長年愛読されているベストセラー。澤田健先生の通い弟子であった代田文誌氏が、自分の臨床経験を織り交ぜながら、一つ一つのツボを、多くの書物からまとめあげた著作。澤田健先生の治療体系も垣間見ることができます。

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鍼灸治療の基本となる経絡は、十二正経と、奇経に含まれる任脉と督脉です。中国の医家である滑伯人(または滑寿)は、この二つを併せた解説書として、『十四経発揮』という本を書き上げ、これは日本の経穴学の基礎となる一冊とされてきました。ここからも分かりますように、経絡の中でも、この十四経はたいへん重要視されてきました。本書はその十四経とそのツボの解説を中心に、澤田健先生の澤田流太極療法のポイントを解説しています。
本書は様々な古医書を元にしながら、著者である代田文誌氏の臨床経験を加味して、十四経の経穴をまとめ上げています。取穴部位はもちろんのこと、経穴の別名や、その主治も載せてありますので、経穴をもっと知りたい方や、これから経穴を覚えていく鍼灸の初心者などにもお薦めですし、ベテランの先生のとっても、時折めくるにはちょうどいい本かもしれません。

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代田文誌氏は、その当時その名も天下に轟いていた、お灸の名人である澤田健先生の通い弟子をしていた人です。澤田健先生の治療を間近で見ながら、澤田健先生の治療体系を学び、長野の自宅に戻っては実践し、そしてその成果を書物としてまとめて、多くの鍼灸師に啓蒙をしてきた方です。また代田文誌氏は俳人としても活躍した方ですので、文章とその内容にも定評があります。代田文誌氏が書いた『鍼灸眞髄-澤田(沢田)流聞書』 代田文誌・澤田健著 医道の日本社と併せて読みますと、より澤田健先生の姿が蘇ってきますので、両者合わせてのご購読をお薦めいたします。

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