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  • 著者 木村順
  • 発行 大月書店
  • 小児鍼をするということは、こどもと母親を支援することです。支援者である鍼灸師もまた、こどもの成長や発達について考えてみる必要があります。本書は、子育てにとってもとても大切なことが書いてあります。

臨床で小児鍼をしていると、お母さんからアドバイスを求められることが多々あります。小児鍼を受けにいらっしゃるお子さんは、落ち着きがなかったり、神経が過敏であったりと、その成長段階で、心と身体の双方の関連づけがアンバランスになっていることが多いように思います。東洋医学の言葉で説明をすることもできなくもないのですが、ある程度専門的な知識を持っていた方のがアドバイスもしやすくなり、解決の糸口を見つけやすくなります。『育てにくい子にはわけがある』では、このアンバランスな状態を“「感覚統合」のつまずき”と捉えています。一見すると臆病なだけと思われがちな仕草の中には、実は感覚統合がうまくできていないというものも含まれており、それは今後の成長に大きな足かせになる可能性を秘めています。俗に言う“育てにくい”と思われるこどもの行動は、愛情不足というような子育ての欠陥ではなく、感覚がうまく統合されていないという問題のことも多いと本書は示唆しています。

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子育てのアドバイスの中には、“こどもには愛情を注ぎなさい”と言っているものも多いですが、その愛情を注ぐ行為が具体的には何を指すのか、また、どこからどこまでの範囲のことを言うのか、いざ愛情を注ごうとした時に、アドバイスをした本人でさえもが、何をしていいのか分からないということも少なくありません。何をどうしたらいいのか、いざ具体的なアイデアの部分になると、なかなかちゃんと答えることができません。小児鍼は、数多い鍼灸治療の適応の一つに過ぎませんので、そこまで専門的な知識は必要とされていないのかもしれませんが、しかしプロとして小児を受け入れているのであれば、その窓口として少しでも具体的な施策を考える責任はあると思います。

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小児鍼を受けにいらっしゃるお子さんは、それぞれ育っている環境が異なります。また、限られた診察時間の中で、的確にお子さんのことを理解していくことは簡単ではありません。しかし単に性格の問題や愛情問題ではないではなく、本書の言うような発達段階での感覚統合の失調もありえるという視点を持つことは、相談をするご家族の選択肢を増やしてあげることにもなり、また、お母さんやご家族の中には、お子さんの症状を、親御さんの愛情不足や愛着障害と周囲から攻められている方も多く、その言われなき根拠によって疲弊してしまっている方への精神的負担を軽くすることもできます。お子さんだけではなく、親御さんのケアのためにも本書はたくさんの具体的なアドバイスの根拠となります。

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