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  • 著者 金子光延
  • 発行 集英社新書
  • 小児鍼をする際に難しいのは診察です。小児は大人のように症状を話すことができませんので、あらゆることを想定しておかないと対応できません。本書は親御さん向けに書かれた本ですが、鍼灸師としても知っておきたいことや臨床のコツがたくさん書かれています。

清朝時代に編纂された古医書に『医宗金鑑』というものがあります。この本の中に小児に関する病気とその処方をまとめた巻がありますが、その冒頭を意訳してみると、「赤ちゃんは症状を訴えることが出来ないので治療がとても難しい。そこでしっかりと診断する方法を身につけるべきである。」と書かれています。小児が症状を自ら訴えることができないというのは当たり前なのですが、このことが小児の治療を難しくする大きな壁の一つになっているのは、古今東西変わらないことであります。また、東洋医学には西洋医学にはない診察方法があり、特に脉診などはかなり発達をしていますが、小児はまだ身体の臓腑が未発達であるため、脉診もできないので、診察はとても限られたものとなり、それがまた小児の治療の困難さとなっています。『医宗金鑑』の冒頭の文章は、小児の治療をする医家への、改めての記述なのでしょう。(小児の脉診については、指の筋の出具合を見る方法もありますが、習熟するためには時間と経験が必要とされます。)

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こういった小児の治療に対しての困難さはありますが、小児鍼をしているのであれば、ここを避けることはできません。そこで、まずは病院での治療が必要なほどのものなのか、それとも小児鍼でも対応できるものなのか、重症か軽症かといった大まかな鑑別ができるだけの知識を持っておくことが大切になります。
本書は赤ちゃんから小児まで、お子さんをお持ちの親御さんに向けた簡易的な一冊ですが、小児鍼を受けにいらっしゃるときの症状の多くをカバーしており、ポイントがまとめられているので、頭の中に整理しておきやすいと思います。本書で扱っている症状で主なものを挙げると、「かぜ」、「熱が出る」、「咳が出る」、「下痢をする」、「お腹いたい」など、小児鍼をしているとよく訴えられる症状ばかりです。小児の症状だけではなく、親御さんが抱く小児の病気への心理状態や、そういった親御さんへのアドバイスなどもありますので、治療面でも、患者さんとの対話の面においても、小児鍼をしている鍼灸師には役立つ一冊となることは間違いありません。

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