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  • 著者 伊藤節子
  • 発行 講談社
  • 価格 760円(本体価格)
  • 小児鍼をしていると、アレルギーの相談を受けることが多い。特に乳幼児の食物アレルギーはの相談は多くなっている。鍼灸師にとっても、この分野の基礎的な知識を身につけておく必要がある。

小児鍼の臨床では、小児湿疹や幼児湿疹の相談を受けることも少なくありません。東洋医学的に考えると、幼児湿疹は消化力がまだ未発達なことによって起きるものが多く、それを補ってあげることで改善されることを臨床ではよく実感しています。鍼灸の臨床では、東洋医学の言葉で、「脾胃の力を強くしてあげる」と言えば事足りることかもしれませんが、実際に身体の中ではどのような変化が起きているかを理解しておく必要があると思います。また、鍼灸の臨床家の中には、自然食や偏った食事指導への傾倒が強すぎて、同じように極端な食生活を患者さんに強いる方もおり、かえってそれで改善が遅れてしまったり、様々な食材への消化力を強くしてあげなくてはいけない時期に、かなりの制限を加えてしまって食べることができなものが増えてしまうと言うこともあるようです。

本書は、小児に起きる食物アレルギーに特化した内容です。多少同じことの繰り返しの記述が多く、まとまりがないように思いますが、一つの狭いテーマに絞って書かれているので、これを一冊読んでおけば、食物アレルギーのことは一通り俯瞰できるようになっています。

本書が一貫して主張しているのは、「食物アレルギーは必ず治る」ということ。そしてそのためには、「適切な食事制限をある時期まではしっかりしておく」ということ。この二つをぶれないようにして対処すれば、それほど難しいことではないというのが本書のいいたいことだと思います。本書は、そのために必要な知識を一冊にまとめたもので、アレルギーが起きる原理のお話し、食物アレルギーのお話しなどの基礎的な知識からはじまり、食物アレルギーの治療や予防、食事の与え方などが順序立てて述べられています。また、ところどころで、はっきりとは述べていませんが、間違った治療や極端な食事指導でかえって食物アレルギーの治療が妨げられているという、無知な鍼灸師にとっては耳の痛い批判的な内容も見受けられます。

本書は、小児のアレルギーだけではなく、アレルギーそのものを理解するためにも役立つところがあります。鍼灸の臨床では、アレルギーの患者さんにもよく出会いますので、基礎的な知識の向上を図り、自分の鍼灸臨床にも活かすためにも、本書はきっと役に立つと思われます。

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