- 著者 小曽戸洋
- 発行 大修館書店 あじあブックスシリーズ
- お薦め度 ☆☆☆☆
- 東洋医学・漢方の歴史がコンパクトにまとまっているので、概観するのにとても分かりやすい一冊です。日本の漢方の歴史にも触れているので、とても参考になります。
東洋医学はどのように誕生し、どのように発展していったのか。
東洋医学・鍼灸の源流は、言うまでもなく中国古代文明に端を発していますが、前漢の時代には原典である『黄帝内経』が成立するという成熟と完成を見せています。その後連綿とその思想、技術が世代を超えて受け継がれ、さらに各時代の著名な医家によって発展を遂げ、現在もまた、我々はその恩恵を享受することができています。世界各国には古くから伝わる伝統医療と呼ばれるものが数多くありますが、その中でもこの東洋医学・鍼灸は、中国を発祥地とする伝統医療であり、他の伝統医療よりも完成度が高く、地域や民族、時代を限定せずに、多くの人々の健康の維持や治療に、実際に効果があがっています。今日においても医療として認められ、人々の健康に寄与している鍼灸・漢方薬。人類の歴史から見てもこれほどの長きに渡り利用され、今日も生活に根ざしている医療も稀有であります。
地域や歴史を超え、人類が受け継いできたこの医療は、いったいどのような歴史があるのでしょうか。一般に東洋医学・鍼灸は“伝統医療”という総称の一つに入りますが、その枠に留まらずに広く今日も利用されている東洋医学の歴史を、成り立ちから発展、受け継がれ方、そして中国と日本の展開をそれぞれ分かりやすく解説しています。馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)から発見されたミイラのお話など、興味深いものもあります。東洋医学・鍼灸の歴史を学びながら、東洋医学の基本的な考え方にも触れることができる、コンパクトな良書です。著者は現在、北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部部長を勤める医学史のエキスパートですので、内容にも信頼性があるのでおすすめです。