• 著者 金谷治
  • 発行 中公新書
  •  お薦め度 ☆☆☆☆☆
  • 東洋思想の第一人者が、中国思想をわかりやすく解説してくれる好著です。中国思想は決して過去のものではなく、未来を開く、常に新しい要素を持った学問であることを再認識させられます。

[quads id=1]

狭義の東洋医学という言葉が示す範囲は、“中国発祥の医療”という地域が限定されたものになりますが、そこには鍼灸、漢方薬、導引などが含まれます。これらの基礎にある五行学説、陰陽論といったものは、全て中国思想・中国哲学に由来しています。古典的な鍼灸や、古典的な漢方薬の処方をするには、必ずこの五行論や陰陽論を駆使しなくてはいけませんが、そのためだけに、中国思想や中国哲学を学ぶことは、必須ではありません。

[quads id=3]

 

中国思想を知らなくても、治療はできます。しかし、これらを学ぶことによって、自分が行う治療内容の奥深さを知ることができます。この奥深さを知ることは、本当の意味での精・気・神を知ることにつながり、それは、自分の治療の幅を広げることにもなります。また、このような中国思想を理解しておくことは、古医書を読むときにもとても役に立つバックボーンになります。

[quads id=4]

 

東洋医学・鍼灸医学の概念として、精・気・神という三つはとても大切になりますが、例えば、精は父母から受け継いだ生命力と理解されます。この精を預かる生命を尊重することは、つまり、その受け継いだ元の父母を敬うことにつながり、ここから儒教の孝の思想が生まれ、それがまた養生の考え方にもつながっていきました。
この本は、そういった中国思想の基本的な考え方を、平易な文章で丁寧に書いてあります。中国思想・中国哲学の入門書として、そして、一歩先をゆく臨床家を目指す方にお勧めの一書です。

 

[quads id=2]